INTERVIEW
インタビュー魂豪示像 -極-
原型師:岩倉 圭二KEIJI IWAKURA
開発担当:橋本 佳那KANA HASHIMOTO
優勝ペアが魅せる、ドラマチックとハードボイルド。

Q.昨年の「造形王」ではこの橋本さん、岩倉さんのペアで優勝という素晴らしい結果を残されました。今年の出場の経緯を教えてください。
橋本) 私が入社して初めて担当したのが「一番くじEX 魂豪示像」で、その時の造形師さんが岩倉さんでした。それ以来、お仕事は数えきれないほどご一緒させていただいています。昨年は一緒にタッグを組み、優勝というありがたい結果をいただくことができましたので、今年も一緒に出場したいなと思っておりました。
岩倉) 今年もオファーをいただいて、踊りだしそうなくらい嬉しかったです。一番くじシリーズは10年以上担当していますが、常に「造形王」のつもりで全力投球してきました。橋本さんのイラストはいつも心を動かされるんですけど、今回も絵の段階で泣きそうになりましたね。あのセニョール・ピンクか!と。
橋本) 今年のキャラクター選びは本当に迷いました。岩倉さんの筋肉造形を活かしてカルガラをお願いした結果、ユーザーの皆さんにも好評で優勝という結果も残すことができました。そこで今回も「岩倉さんだからこそ活きる」「あまり立体化されていないが愛されている」という条件で考え抜き、たどり着いたのがセニョール・ピンクでした。コミックスを読み返し、フランキー戦でまた涙して……この感情を形にしたい!と思ったんです。
岩倉) 出番は少ないのに、セニョール・ピンクはめちゃくちゃ愛されているキャラクターですよね。僕自身、作る前から一番といってもいいくらい好きだったので……もう最高!という気持ちでした(笑)。

Q.セニョール・ピンクがフランキーに立ち向かう“最後の一撃”がシーンの軸となっています。全体構成へのこだわりについて教えてください。
橋本) セニョール・ピンクはフランキーと対決する際、自身の過去に向き合います。その点を踏まえて、過去を包み込むような構図を意識しました。ただ、彼はきっと過去を振り返ったとき、「後悔」よりもルシアンやギムレットとの想い出を懐かしむような気持ちでいると思いました。「会いたいけど、もう会えない」。そんな孤独感を演出するために、ルシアンや息子のギムレットはあえて入れていません。また、正面はセニョール・ピンクの家庭があり、中をくぐって出ると背面はスマイル工場へ抜けるという、過去と現在をつなぐジオラマになっています。企画初期の段階では背面をエフェクトだけにして彼の哀愁を演出する方向でしたが、岩倉さんの提案でスマイル工場になりました。
岩倉) 誰がどう作っても良い仕上がりになるだろう、というくらい橋本さんの絵がドラマチックで泣けたんです。じゃあそのときに僕が何をすればいいのかということで、ハードボイルド(のエッセンス)を入れさせてもらいました。やっぱり、僕の仕事はそこかなと。セニョール・ピンク、かっこいいなぁ!と改めて思ってもらえたらいいな。とくに背中の造形には注目してほしいですね。

橋本) 傷跡にも彼の重ねてきた戦いの過去が滲んでいますよね。緻密な部分から荒々しく表現されている部分まであり、煙突の塔の屋根のレンガの一つひとつにまでテクスチャーが施されている。エフェクトも含めてツルツルなところが一つもない徹底ぶりです。やはり企画側の考えた設定や構図は、造形師さんの表現によってリアリティが出るからこそ成り立つものだと改めて実感しました。
岩倉) 僕はマニアックな作り込みが大好きで、誰にも気付かれないかもしれないギミックを仕込むのも楽しみの一つです。家で飾ったとき、「こんなとこまで!」と発見するとすごく幸せな気持ちになるんです。海外のフィギュアだとそういう仕掛けがたまにあって。
橋本) それで言うと、今回の試作品を初めて設置するとき、台座を見た瞬間に「え!」と驚きました。岩倉さん、こんな見えないところまで作っているのか!と。飾った時にはライトを照らさないと見えないのですが……この「天井部分」を見ることができるのは購入した方だけの特権ですね。ぜひ楽しみにしていただけたらと思います。
Q.具体的な制作プロセスの中で、特にどんな点に挑戦がありましたか。
橋本) 耐久性の関係から、中央が空洞のドーム型構造で、しかもその内部自体が見どころになっているフィギュアはあまり例がありません。今回の最大の挑戦の一つが、この独特な「形状」でした。どうしても窓を開けた状態にしたくて、イラストの段階から開発チームと緊密に相談を重ねてきました。原作では雨が降っているため窓は閉じていますが、戦いに敗れた後、すっきりとした表情で涙を流すあの場面の開放感を、「開いた窓」で表現したかったんです。悲しみだけでなく、未来を見据える希望も感じられるように。こうした翻案も「造形王」ならではの挑戦だと思います。
岩倉) 背面こそ僕が足した部分はありますが、基本的には橋本さんの絵を忠実に再現したいという一心でした。あとは「泣きの中のハードボイルド」をいかに表現するか、でしょうか(笑)。
Q.「造形王」では今回から海外投票が加わりますが、それについてはどのように受け止めていますか?
橋本) なるようにしかならない、ですかね。出場者皆さんの素晴らしい造形を見て、投票するまでの流れを楽しんで頂けたら嬉しいです。
岩倉) お客さんから「会社に行く前にフィギュアを見ると元気が出ます」と言ってもらえるのが一番嬉しいので、海外の方からもそんなリアクションがもらえたら最高ですね。みんながフィギュアを好きになれば、ちょっとくらい平和にならないかなって。
Q.最後に、今回の「造形王」への参加した感想や出来上がったものへの感触を教えてください。
橋本) これだけ自由度高く、なんでもやらせてもらえるのは「造形王」ならでは。このサイズ感で若いセニョール・ピンクを作れる機会は今後あるかわからないし、値段設定の上限もなかったので「大きくなる分にはいい!」とやりたいことができました。120点と思える出来になったと思います。
岩倉) 造形を終えて、最後に妻と一緒に発送用の梱包をしているときに(集中力が切れて)「もうだめだ〜」となるくくらい、本当に、カラッカラになるまでやりたいことができたし、出し切りました(笑)。信じられないくらい楽しかったです!
