INTERVIEW

インタビュー

S.H.Figuarts

原型師:長汐響KYO NAGASHIO
& GB2 COMMUNICATIONS

開発担当:衣笠哲史SATOSHI KINUGASA
& GB2 COMMUNICATIONS

開発担当:秋場 皓貴KOKI AKIBA

数々の新しい技術で、「造形王」のリベンジを果たす。

Q.S.H.Figuartsは、昨年の「ONE PIECE 造形王2024」のリアルフィギュア部門でエースのアクションフィギュアで3位入賞を経て、今年も挑戦されます。今回のチーム結成の経緯と参戦への想いをお聞かせください。

秋場) 昨年のエースはコレクターズ事業部としても、また可動フィギュア界にとっても素晴らしいものができたと感じておりました。それでも優勝には届かなかった現実に「造形王」のレベルの高さを改めて痛感しましたし、同時に手にとって遊んでみて分かるアクションフィギュアの魅力を伝える難しさも感じました。だからこそ、今年は「リベンジしたい」という想いが強かったです。

長汐さんと衣笠さんとは、以前から別のS.H.Figuarts作品でご一緒していて、いつか『造形王』に一緒に出られたらいいですね」とよくお話していました。お二人は、フィギュアの打ち合わせを本当に楽しんで新しいことに挑戦してくださる方々です。昨年のリベンジという意図もありつつ、アクションフィギュアの限界を超えていくような挑戦をするなら、このお二人しかいない、と考えました。

長汐) 去年3位という結果をいただいて、挑戦者としての面白さや手応えはすごく感じていました。我々の好きなアクションフィギュアという世界を広げ、その楽しさを伝えていく。その先に優勝があれば最高だな、という気持ちです。再びこの機会をいただけたことを光栄に思います。

衣笠) 僕がこの道に入ったきっかけは『ONE PIECE』で、「造形王」は一番最初に開催されたプライズの頃からのファンでした。去年、長汐がエースで参加しているのを横で見ていて、すごいなと。その舞台に、今度は自分が参加できるというのは本当に嬉しかったです。

Q.造形師になられたきっかけが『ONE PIECE』なんですね。

衣笠) そうなんです。もともと趣味としてオーブン粘土で作った造形物を『ONE PIECE』の単行本の名物コーナー「ウソップギャラリー」に投稿したら、単行本の51巻で大賞をいただいて。尾田先生から直筆の色紙が送られてきたことで「プロになっちゃえば?」と背中を押されたのが始まりです。だから、僕は『ONE PIECE』がなければ、今ここにいない。運命的なものを感じています。

長汐) 彼が『ONE PIECE』について色々発信しているのを見て、今年は一緒に戦うのが面白いんじゃないか、と。制作では僕が可動構造含めての造形総指揮をとり、衣笠が外側の造形を担当する二人三脚で挑んでいます。

▼作品について

Q.今回、キャラクターとしてマルコを選ばれた理由と、その造形におけるこだわりについて教えてください。

秋場) アクションフィギュアの限界を超え、スタチューフィギュアとも戦えるような派手さと可動の面白さを両立できるキャラクターとしてマルコを選びました。S.H.Figuartsでマルコを出すのは、今回が初めてです。

長汐) マルコをやるなら人間の腕や足と能力発動状態の両方を作らないと意味がない。「これをやってこそ決定版を出せる」という想いで、コンパチブル(パーツ付け替え)仕様にしました。作業量はめちゃくちゃ増えましたが、「造形王」はそういう場所なので。

衣笠) 色々な顔の表情を作れたのが楽しかったですね。通常のフィギュアは澄まし顔が多いのですが、今回は怒り顔、叫び顔、食いしばり顔、そして笑い顔まで作りました。昨年のエースと並べた時、二人が笑っている姿などを想像しながら作れたのも面白かったです。スタチューでは再現しにくい宴のようなシーンも、アクションフィギュアなら再現できる。それがファンにとっては嬉しいポイントになると思います。

Q.マルコを造形する上で、特に難しかった点はどこでしょうか。

衣笠) マリンフォード編と最近のワノ国編とで顔の表情やエフェクトの表現が少し違うので、そのすり合わせです。「どの時代に合わせるのか」を皆で話し合い、マリンフォード編の鋭さを意識しつつ、最近のバージョンに落とし込む、という作業に苦労しました。でも、結果的に良い顔になったと思います。

長汐) そのすり合わせは、まさに最大公約数を探す作業でした。アニメも原作も読み込み、第三者の目として秋場さんにも見てもらいながら、「フィギュアとしてイケメンか」という視点も忘れないように注意しつつ、時間をかけて総合的に判断していきます。

Q.翼の表現も非常に精緻でありながら可動するとのことでした。これはどのような技術なのでしょうか。

長汐) 翼にはワイヤーが入っていて、自由に形を変えて固定できる「ベンダブル」という手法の最新版のような技術を使っています。前回のエースの時は布製のマントにワイヤーを入れましたが、今回は成形物自体にワイヤーが入るのでより形の自由度が上がっています。

秋場) これも量産の限界に挑戦する新しい試みです。衣笠さんと長汐さんには、「やり過ぎなくらいリアルな味を出してください」とお願いし、翼の一本一本、細かいディティールまで作り込んでいただきました。

衣笠) 鳥の羽を意識しつつ、今までにないかっこいいエフェクトの羽になっていると思います。色がついたらもっと良くなるはずです。

Q.可動フィギュアならではの「動かした後の造形」にもこだわられているとも。

長汐) そこがアクションフィギュアの肝ですね。例えば肘を曲げた後に出てくるシワを造形し直したり、肩が前に出たときに肩の後ろを造形し直したり。動かすことで隙間が空いてしまう部分を造形する、この辺はいつも私の担当です。

衣笠) 中にちゃんと骨と筋肉がある、ということを意識して、白ひげ海賊団一番隊隊長らしい風格が出るように作っています。原作で細いからといって細く作るのではなく、エースや他のキャラクターと並べたときにちゃんと強そうに見えるように、と。その力強さが伝わればいいなと思います。

Q.今回から海外投票が加わりますが、それについてはどのように受け止めていますか?

長汐) すごく嬉しいです。もとは海外から始まったアクションフィギュアの文化は、日本では独自の進化を遂げています。関節の作り込みや軟質パーツの使用など、今回のような試みをしているアクションフィギュアは世界中どこにもないはずです。海外に「日本のアクションフィギュアは今こんなにすごいんだよ」ということを見せられる。それで票が入ったら、我々のやっていることを分かっていただけたということでもあるので、すごく楽しみです。

衣笠) 翼の可動もそうですが、「新しいことをやっている」というのが海外の人に伝わればいいなと。海外にはないような可動ができるんだ、ということが伝わって、「欲しい」と思ってもらえれば、それが票に繋がってくれると期待しています。

秋場) 『ONE PIECE』の『S.H.Figuarrts』シリーズは海外のファンも非常に多いので、去年のエースに続いて白ひげ海賊団繋がりのマルコが出る、という点でも喜んでくれるんじゃないかと思っております。担当者としては、その期待に応えるためにこの魅力をしっかりと伝えていく責任を強く感じています。

Q.最後に、今回の『造形王』への参加をへて、今後の夢や挑戦してみたいことがあればお聞かせください。

長汐) S.H.Figuartsのルフィのギア5(フィフス)腕の関節機構がベンダブル機構になったことに代表されるように、『ONE PIECE』という作品自体が常に新しい表現を次々と生み出しているので、これからも挑戦的なキャラクターが出てくればトライしてみたいですね。個人的にはロブ・ルッチもやりたいです!

衣笠) 強いキャラクターだけでなく、バギーのようなギャグキャラクターこそ可動が活きると思っています。フランキーもギミック付きで作れたら面白そうですよね。あとは、ガープのように振り幅の広い、表情が豊かなおじいちゃんキャラクターも作っていて楽しいだろうなと。

秋場) 今回のマルコでは新しい技術を色々試させていただいたので、次はこれを超えるものというと……大きさぐらいしか思いつかなくて(笑)。ロキとかを、信じられないくらい大きいサイズで作ってみたいな、という気持ちはあります。エース、マルコと来ているので、白ひげもやってみたい。夢はいっぱいあります。

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