INTERVIEW

インタビュー

ワンピの実

キャラクター原型師:株式会社oneONE Co., Ltd.
(MIC)

彩色師:谷口 世太郎YOTARO TANIGUCHI
(COLORER)

ワンピの実カプセル原型師:誠三郎SEIZABURO
(MANIPLA)

開発担当:野添 よう子YOKO NOZOE

優勝にこだわった先に辿り着いた、カプセルトイならではの強み。

Q.今回の「ONE PIECE 造形王頂上決戦」に「ワンピの実 ミクロ」という、非常に挑戦的なコンセプトで挑むことになった経緯からお聞かせください。

野添) 前年の「造形王」でも、ワンピの実は株式会社one(エムアイシー)さんの作品でご好評いただき、優勝も狙える手応えを感じていました。ですが、やはり同じサイズ感やコンセプトで再び挑むのは、インパクトに欠けるだろうと、前年度の投票が終わった直後から、「次は何をすべきか」と1年間ずっと考えていました。

そこで突き詰めたのが「カプセルトイならではの面白さとは何か?」という原点でした。他のフィギュアと比べた時のカプセルトイの最大の魅力は、やはり"小ささ"にあります。カプセルという限られた空間の中で完結する楽しさにこだわり、今回は「ミクロ」という『ONE PIECE』フィギュア史上おそらく最小となるサイズで、造形の限界にチャレンジしようと決めました。

株式会社one(エムアイシー) その企画を初めて聞いた時は、まずすごく小さいなと(笑)。そして、「このサイズで『造形王』に勝てるのかな」とも思いました。出場するからには優勝したいので、最高の物を作ろうという思いはありましたが、「これはどうしたものか」と。この小ささの中に「造形王」にふさわしい何かを詰め込まなければならない、と考えたんです。

谷口) 私も最初はエムアイシーさんと同じく「小さいな!」と驚きました。あとは本当にこれを塗れるのかな、って。ただ、実際に作業に入ってみると、これまでのワンピの実で100体以上塗ってきた経験があったことで、思ったよりすんなりとそのままの感覚で塗ることができました。

野添) 今回の「ミクロ」は、持ち運びもできる「ブリスターチャーム」という形にもこだわりました。これまでのワンピの実は立てて飾るのが基本でしたが、今回はブリスターパッケージに入れてボールチェーンを付けることで、キーホルダーのように持ち運べるという新しい楽しみ方を加えています。この前代未聞の企画を実現するには、エムアイシーさんの圧倒的な造形力と谷口さんの彩色技術が不可欠でした。このチームでなければ成立しなかったと思っています。

▼作品について

Q.キャラクターとして主人公のルフィを選び、ギアの変遷を表現するというテーマですが、この作品の具体的なこだわりについて教えていただけますか。

野添) キャラクター選定はめちゃくちゃ悩みましたね。当初は麦わらの一味で構成する案もあったんですが、「造形王」にチャレンジするのであれば、やはり主人公であるルフィを主役に据え、その成長の軌跡であるギアの変遷を見せることが最も面白いだろうと。シークレットも1種加えて、何が出るかわからないガシャポンらしさも演出しました。

株式会社one(エムアイシー) ルフィは『ワンピの実』でもたくさん作ってきましたが、今回はギア2(セカンド)からギア5(フィフス)まで、それぞれに個性があって顔つきも違うので、作り分ける楽しさもありました。

特に意識しなくても、原作の漫画で既に全く違うキャラクターになっているので、造形自体に迷いはありませんでした。それよりも、その時々のルフィの心情を妄想しながら、自分もその世界に没頭して作っていましたね。作りながら、自分で勝手に「ドン!」とか「バーン!」とか、馬鹿みたいに言いながら(笑)。

野添) まるでルフィに同化するような感覚で。

株式会社one(エムアイシー) そうなると最高のものが作れるんですよ。特に面白かったのは、シークレットにしたあのシーン。これまでなかなか作る機会に恵まれず、ずっと作りたいと思っていたんです。原作の中でもすごく盛り上がっているシーンだったので、念願が叶った分、気持ちも乗りました。

野添) 今回は「造形王」ということで、シークレットも含め、ポージングは全てエムアイシーさんにお任せしました。ブリスターに入れることで必ずしも自立させる必要がなかったので、他のシリーズでは採用できないような躍動感のあるポーズが実現できたのかなと思います。

株式会社one(エムアイシー) 極小サイズであるがゆえの造形的な工夫も施しています。生産される製品のサイズを見越して潰れてしまうような細かい部分は避け、シワのメリハリを通常より大きくつけたり、布の厚みを調整したりする必要がありました。特に手首や足首の細さは強度にも関わるので、野暮ったくならず、かつカッコよく見える絶妙なバランスを探るのが難しかったですね。

谷口) 小さい上に全6種が同じルフィということで、色の指定にも結構制約がありました。その中で、何も指示が書かれていない部分に自分なりに"攻め"の表現を仕込んでみました。例えば、ギア2のルフィが纏う蒸気の部分ですね。さすがにベタ塗りだと面白くないので、グラデーションを入れてみたり。工場の方は苦労されるかもしれませんが、「再現、頑張ってください……!」という思いを込めています。

野添) もちろん、サイズが小さいがゆえの生産上の制約は多く、谷口さんには顔の傷がずれないように工夫していただくなど、様々な調整をお願いしました。我々ベンダーの役割は、この素晴らしい彩色見本をいかに量産品で忠実に再現するかです。「見本は良かったのに、実際の商品は……」ということには絶対にならないよう、これから発売に向けて調整していきます。「造形王」のための一点ものではなく、あくまで"500円で手に入る商品"として、最高のクオリティを目指します。

Q.最後に、今回の「造形王」をへて今後の夢についてお聞かせください。

野添) 正直、前回の「造形王」でもうネタを出し切ったかな、と思っていたんです。ですが、皆さんからの期待に応えたい一心で考えに考え、また一つ面白い企画ができました。カプセルから出てきた時の驚きや楽しさを最大化できるものができたと思います。引き続きワンピの実を通して、新しい挑戦を続けていきたいですね。

谷口) ワンピの実というデフォルメの中で、ヴィネット(ジオラマ風)や今回のミクロなど、あらゆる表現方法にトライできると感じています。彩色師としては、尾田先生が描く扉絵のような、豊かな色彩感や"わくわく"をフィギュアに落とし込んでいきたいです。

株式会社one(エムアイシー) 常に何か違うものに挑戦していきたいですね。私は原型師として"自分らしさ"は必要なく、原作の雰囲気をどれだけうまく作れるか、それだけだと思っています。今回も仲間と一緒に最高のものができたと確信しています。

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