INTERVIEW
インタビューフィグライフ!
原型師:高橋 晋太郎SHINTARO TAKAHASHI
(TOTOY)
開発担当:玉井 康太KOTA TAMAI
「造形王」優勝経験者が魅せる、新しいアイデアとギミック。

Q.ウロタこと髙橋さんはかつて「造形王頂上決戦Ⅵ」で不死鳥マルコを手がけて優勝も経験されています。今回、フィグライフ! ブランドでの出場の経緯をお教えください。
髙橋) 今回の企画は、もともと大学時代の同級生だった前任の企画担当者から「何か記念になるものを一緒に作らないか」と声をかけてもらったのがきっかけです。その彼が担当を外れることになり、引き継いだのが以前から『ONE PIECE』の「Grandista」シリーズなどで長くご一緒している玉井さんでした。せっかくの機会ですし、玉井さんとなら一緒に頑張れると思い、オファーをお受けしました。
玉井) 髙橋さんには、「Grandista」シリーズのほか、まだ発売前のフィグライフ! のアイテムなどもお願いしています。企画自体は引き継ぎましたが、タッグとしては自然な形で継続できていると感じています。
Q.キャラクターとして「バギー」を選んだのはなぜでしょう?
髙橋) 僕が(当時)バンプレストさんとお仕事をさせてもらうきっかけになったのが、以前「造形王Ⅳ」に出場した際に作ったバギーなんですよ。そのことを当時の担当も覚えていてくれて、「せっかくなら久々にバギーを作るのも面白いんじゃないか」と。ある意味、僕の原点回帰とも言えるキャラクターですね。
僕の中で「造形王」という大会は、原型師がある程度自分のアレンジを入れて楽しく作るシリーズ、というイメージでした。でも、近年の大会を見ていると、企画担当者と原型師のタッグ戦の様相を呈してきています。その中で、フィギュアを生活の中に取り入れるという、僕自身がすごく面白いと感じているフィグライフ! ブランドの魅力をまず最大限に活かしたいと考えました。個性的な造形をするというよりは、企画そのものを面白いと思ってもらえるような新しいギミックを入れたいな、と。
玉井) 髙橋さんからは本当に面白いギミックをたくさん提案していただきました。特に、バギーが「バラバラの実」の能力者であることから着想を得たマグネット仕様は企画の核となりましたね。
髙橋) そもそもバギー自体が本当に面白いキャラクターなんですよね。何も成し遂げていないようで、どんどん登り詰めていき、本人も不安なのかと思いきや、彼が何か喋るとみんなが盛り上がる。なんだかんだ共感できる部分もあるし、何か"持ってる"。表情がコロコロ変わるので見ていて飽きません。

Q.今回の作品では、バラバラになったバギーに磁石が内蔵されていて壁などに貼り付けられるようになっています。こだわりポイントは?
髙橋) バギーは表情が豊かなキャラクターなので、その魅力を表現したいと思い、右と左で見る角度によって表情が変わる顔を作りました。さらに、そこに眼球可動を加えて目線も動かせるようにしています。右から見た顔は、四皇になったときの手配書にあった何とも言えない面白さとカッコよさが同居した表情をイメージしています。左側は、少し叫んでいるような、慌てているようにも見える顔になっています。目線の動かし方次第でさまざまな表情が楽しめるはずです。
マグネットを使って壁の高い位置に飾れば、バギーが見下ろしているように見えますし、付属するクロスギルドのポスターの端に置けば、ポスターを眺めているようにも演出できる。ただ置くだけではなく、色々な飾り方を試して何回でも遊んでもらえるものになったんじゃないかなと思います。
玉井) 眼球可動というアイデア自体、普段から可動フィギュアに慣れ親しんでいる髙橋さんだからこその発想で、我々プライズ事業部の企画担当からは絶対に出てこない引き出しです。さらに、そのギミックを最大限に活かす「左右で表情が異なる造形」というのは高い技術がなければ成立しません。それを違和感なく再現する技術と、活かすアイデアの両方を提供していただき、本当にありがたいです。
髙橋) インタビューだからか、今日は特に褒めてくれますね(笑)。ただ、僕たちが作るのはあくまで商品だし、お客さんが手に取ったときに面白いと思えるものを、というのがメーカーさんの想いだと思います。その想いを最大限に発揮できるような原型を僕が考える。それが僕たちのタッグ戦のスタイルですね。
Q.その複雑な仕様の中で、特に制作で苦労された点は?
玉井) 造形自体はほとんど一発OKだったんです。どちらかというと、一番時間を割いたのは、商品仕様や「どうすればもっと良く見せられるか」というプロモーションの部分でした。
髙橋) 確かにそうでしたね。バギーがアイキャッチになる場面の印象的なライティングを、原型の撮影段階から再現しようという話はしました。デジタルで造形しているので、制作段階でライティングをシミュレーションして「それらしい表情」に見えるよう調整もしています。だから「造形王」用の撮影でも、そのイメージを再現したかったんです。
玉井) フィグライフ! は「遊べるフィギュア」でもあるので、こちらでも実際の使用イメージ画像を用意して、この商品の面白さを伝えたいと考えています。手元に届いたユーザーさまが、このバギーをどんな工夫で見せてくれるのか、SNS投稿なども今から楽しみですね。一方で、マグネットを安全に内蔵する仕様や眼球可動の精度など、普段プライズ事業部で行わないギミックが多い分、生産する上での課題が多いのも事実です。工場の担当者や社内の生産担当者と、より密にコミュニケーションを取って、安全な商品としてお客様に届けられるよう仕様を詰めています。
髙橋) 今回は僕らしさの表現、というよりも、このブランドに何が求められているかを考えて、遊ばせてもらった感じです。
玉井) もともとフィグライフ! はフィギュアをただ飾るだけでなく、もっと身近に感じられるものにしようという想いから始まったブランドです。これまではアミューズメント景品の制限の中で展開してきましたが、今回のバギーはプレミアムバンダイでの販売、しかも髙橋さんとのタッグ。だからこそ眼球可動のような“遊びの面白さ”を付加できました。今回の「造形王」参加で、フィグライフ! の可能性がさらに広がったと感じています。

Q.今回から海外投票が加わりますが、それについてはどのように受け止めていますか?
玉井) 気持ちとしては国内と一緒で、より多くのユーザーさまにこの商品の面白さや、原型師さんのこだわりが伝わればいいなと思っています。既存のユーザーさま以外にもこの商品を見てもらえる、届けられるチャンスだと思うので、世界が広がっていいな、と思いました。
髙橋) 海外には、日本ではあまり見かけないような仕様のおもちゃがたくさんありますし、マグネットのおもちゃも普通にあります。だからこそ、こういうギミックを面白がってくれる人は多いはずです。海外の方がどんな反応をしてくれるのか、とても楽しみですね。
Q.最後に、今回の造形王への挑戦を経て、今後の夢について教えてください。
髙橋) 僕個人としては、今回のように企画担当の方と仕様の面から一緒に話し合って物を作っていく、という経験はあまりないのですごく楽しかったです。これからも一緒に何かを考えて作る機会が増えたらいいなと思います。夢としては、今回の「造形王」で優勝して、僕と玉井さんのタッグ二人分の優勝盾を作ってもらうことですかね(笑)。
玉井) (笑)。私も原型師さんとタッグを組み、そのアイデアや豊富な引き出しを聞きながら企画を発展させていく、という過程がとても勉強になりました。今回の経験で視野が広がり、「もっとできることがあるんじゃないか」と考える良いきっかけになりました。野望としては、まず今回の「ワンピース 造形王 フィグライフ! バギー」をめっちゃバズらせたいですね!
